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コラムColumn

つぶやき 角 昌晃

2007年〜2010年のつぶやきです。

ある患者

ある患者さんが永眠されました。糖尿病、末期の肝硬変、そして透析患者でした。死因は消化管出血でした。
決して優等生ではなかった患者さんでしたが、回診で話すうちに体重増加を気にされるようになり、ときにものすごいがんばりをみせて増加を抑えて来院されるさまを以前の彼女からは想像できません。孫の話をされてもうちょっと長生きしたいと話される姿はまぶしいくらいでした。
前医の内科医は病気に対する諦めからか、この方に好きなものを何でも食べてよいと言い放っていました。その結果自由奔放にされていた彼女がもしそのままで亡くなられたとしたら、我々の心に何が残ったでしょうか。お孫さん達にはどう映るのでしょうか。
末期の糖尿病と肝硬変の患者さんがやりたい放題やって亡くなってしまった。おばあちゃん好き勝手してたねという思いくらいでしょうか。
私はこの患者さんの死が残念でならず、最後にみせた彼女の頑張りに人間としてのあるべき姿を見出し、ちょっと早かったけどちゃんとひとりの人間として天国に逝けたねと声をかけてあげたいと思います。きっとお孫さんの目にも最後に頑張っていた姿は焼きついていて、誰にでも平等に訪れる死を人間はいかに迎え入れるべきか考えるきっかけになったことだと思います。

漫然と透析に生かされ、人生を生きていない方が大勢おられます。

我々はその場限りの、一見優しいが無責任な言葉を患者さんにかけてはいけないのだということを学ばなくてはならないと思います。弱い人は安楽な方へどうしても流れてしまう、それはスタッフも同じことですが医療者としてそこがふんばりどころです。そして麻痺して忘れそうになった患者さんの人間としての尊厳を取り戻す手伝いをしなくてはならない。これが透析に限らず医療の真髄であると思います。

   安全な透析、快適な透析、生活の質の向上

当院ではこれらの基本理念をあげていますが、これらは医療者側から患者さんへ一方的に与えるものではなく、患者さんとともに勝ち取っていくものであることをスタッフ全員が認識しなくてはなりません。礼儀を忘れるのはもってのほかですが、安易な患者さんとの迎合(なれあい)、過剰なへりくだり(慇懃無礼)も慎み、共に考える対等な姿勢を持たねば患者さんは永久に自立できません。
個人的には日々感謝する気持ちと、人生は修行であることを常に心に思い診療にあたっています。そのなかで賛同する患者さんが現れて、御自分の人生をよりよいほうに軌道修正できることのお手伝いすることができれば私の幸せです。


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